のぼりと跡継ぎ
私と主人はのぼりを専門的に扱う業者をしております。
もともとは、服飾関係の仕事をしていたのですが、知人からのぼりの制作は出来ないのかという依頼を受け制作をしたところ、出来がよかった事により客が徐々に増えていき、のぼり専門の業者に鞍替えしたのです。
のぼりとはデザインも重要になってきますので、お客さんに既存に用意しているデザインの中から選んで貰う事もありますし、お客さんの要望を取り入れる形でオーダーメイドする事もあります。
そして、そのデザインを担当しているのが私なのです。
夫婦で仲良く担当を変えていますので、経営に関してもめた事もありませんし、経営状況も良いといえます。
しかし、夫が先日病気で倒れてしまったのです。
私はデザイン以外は出来ませんし、代わりに働ける人もいないので、現在のぼりの販売はストップしている状況であります。
のぼりと跡継ぎ2
実は、私たち夫婦には子供います。
既に成人しているのですが、ある事でもめてしまい、家を出ていってしまったのです。
そのもめた原因が店の事であります。
元々、息子にのぼり業者の跡を継がせるつもりだったのですが、息子のやりかたは徹底的なコストダウンを計って利鞘を大きくするというものだったのです。
確かにそのやり方ならば儲けが増えるでしょうが、お客様に提供するのぼりの質は下がってしまいます。
それを嫌った私と主人は息子のやり方をするならば跡を継がせない方針をとったのです。
しかし、この様な状況になってしまえば背に腹は代えられません。
息子に連絡をとり、経営を任せることになりました。
私は今まで通りにデザインを担当していたのですが、それにも口をだすようになってきたのです。
ついには、自分の彼女にデザインを任せるようになり、私は実質仕事が無くなってしまいました。
私たち夫婦が大事に続けてきたのぼり業者が息子の金儲けの道具になってしまったのです。
始めは調子よく売上は伸びているように見えました。
ですが、コストダウンを考えるあまりに質を考えなくなってしまったのでしょう。
徐々に客は減ってきてしまったのです。
本当は、私たち夫婦はつつましく暮らしていくだけの資金はあります。
ただ、息子に地に足の着いた商売を行って欲しいとのぼり業者を残すために仕事を続けてきたのです。
このままでは私たちの店は潰れることでしょう。
私たちの息子は店は継ぐことができても志は継ぐことが出来なかったようです。